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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

デミオXD これはまだまだ改良の余地があるのでは?

  各メディアで絶賛され、その勢いのままに日本カーオブザイヤーも獲得してしまった日本車期待の1台が新型デミオです。プロの評論家達が先行試乗会でただ絶賛するだけじゃなく、次々と予約注文を入れたというスゴい「伝説」をも作ったようです(マツダが特価で配った?)。マツダディーラーでは点検時に気軽に試乗させてくれるので、スタッドレス履き変えのタイミングでデミオXDに乗ってみました。もはやこれだけの評価がされているクルマですから、「新型は大丈夫だろうか?」といったヘンな老婆心もなかったです。まあそもそもコンパクトカーの良し悪しがいまいち良く解らないので、「これが彼ら(評論家)が狂乱して喜ぶクルマなんだな・・・」とやや上から目線でもありましたが・・・。

  ほとんど(特に日本車)のコンパクトカーに乗って「残念」に思うのが、加速していてまだまだこれからという段階で、パワーの頭打ち感が露になるところです。このデミオXDの動力性能上の最大にして唯一の長所が、このコンパクトカーのジレンマをとりあえず打ち破った点だと思います。見通しの良いやや登りの道路でアクセルを目一杯踏み切っても、普通のコンパクトカーならば物足りない加速をするだけで、中速域では早くも加速感が大きく鈍ります。まあごくごく当たり前の事ですが、デミオXDに関しては中速域からエンジンの本領が発揮されます。ディーゼルエンジンが過給されて力強く、底打ち感なく加速します。そして5ナンバーサイズのボディらしくじわじわとスピード感が全身から伝わります。このナイスな乗り味こそがデミオXDのシンプルな長所です。

  良い悪いで言うならば間違いなく「良い」クルマだと思います。ディーゼル搭載の段階で完全にクルマの方向性が決められてしまうので、結局のところ選ぶ人が長所も短所も全て理解した上で使わなければいけないという自己責任の意味合いが強いクルマです。日本車ではなかなかそういったライバル不在の設計をした大衆モデルというのは珍しい存在で、個性的という意味では日産フェアレディZみたいにユーザーにある種の決意を求める部分が多分にあります。そして困ったことに想像上でデミオXDの使用環境をリアルに考えたときに、「あれ?どこで使おうか?」という気になったりします。

  そもそもBセグにディーゼルを載せるのは、欧州メーカーからすれば常識外の発想です。マツダとしては世界的な「カーライフの転換」を見越したモデルとして、もっと堂々と売ればいいと思いますが、なぜVWプジョーがBセグ&ディーゼルをやらないかというと、廉価車にそぐわないディーゼルエンジンの高コスト体質と、チョイ乗りに向かないエンジンの特性にあると言われています。欧州ではVWに「3Kカー」(up!のことです)という言葉があるように、3000ユーロ程度のコストで6000ユーロで販売するクルマが作られています。現在では円安が進んでいるためにそれほど割安ではないですが、1~2年前の1ユーロ=100円前後の時代には実質的に60万円程度の新車が欧州で販売されていました。

  マツダの日本流の厳しいコスト管理でもディーゼル化によって50万円程度の価格差が生じてしまいます。どう考えても60万円のクルマに50万円の「特別装備」はやはり現実的ではありません。ちなみに日本で人気のゴルフはドイツではガソリンNA(1.2L)でも販売されていて、9000ユーロ程度の価格が設定されています。ゴルフより小さいクラスとなるとガソリンターボこそありますが、ディーゼルはあまりにも贅沢すぎるという判断が一般的のようです。そんな欧州市場での「禁じ手」に打って出たマツダの戦略は、まさに「マツダしかやらないクレイジーな設計」です。そんなクルマをシレっと「欧州テイスト!」とドヤ顔で売り出すマツダの面の皮はなかなかのものではありますが・・・。

  それでもマツダなりに一生懸命にコンセプトを考えている痕は伺えます。従来の駅までお迎え&お買い物を任務としたコンパクトカーに要求される「ちょい乗」には適さないディーゼル搭載がコンセプトの起点ですから、従来の設計はとりあえず白紙です。ディーゼルのトルクではCVTの上限を超えてしまうので6ATに載せ変えますから「街乗り燃費」でコンパクトHVに勝負を挑むことはできません。じゃあ何に使うクルマなのか?結局は中長距離を走って、どこかに訪問するためのクルマに仕上げるしか道はないわけです。そうなると従来とはうって変わって「フォーマル」な風体を備えたクルマを目指し、内装もそれに相応しい高い水準のものが追求されたのだと思います。この辺は欧州車的な礼儀を取り入れているので、「欧州流!」ではありますが・・・。

  内装がよくなってディーゼルエンジンを載せても、通常グレードで178万円です。Lパケでも199万円に踏みとどまったのは、輸入車でも200万円を下回る特別仕様車(プジョー208など)が目立つようになったことが理由のようです。エンジンの特性から言うと、いわゆる「ホットハッチ」とはかなり乗り味が違うクルマで、それでいて軽油の安い日本では抜群の経済性を発揮します。しかしここがマツダにとっての泣き所で、やはり国内市場でブランド力が不十分で販売網における自信の低さが出てしまいます。どんなにいいクルマでも実感として消費者にそれが伝わらなければ何の意味もなく、本体価格を250万円にしてしまうともう見向きもされないでしょう。これはプリウスも通ってきた道ではありますが・・・。

  実際のところ、欧州車大好きな評論家が勝手なことを言ってデミオXDを祭り上げていますが、欧州メーカーでも最近になってミニにディーゼルが使われ始めたばかりです。「ディーゼル&コンパクト」というジャンルが今後出来たならば、デミオがそのパイオニアです。マツダの奇天烈な発想にBMWグループが追従してきた格好です。Bセグのタイトなエンジンフロアでは十分な防音・防振も出来ませんから、エンジン音はともかく微振動がなんとも不思議な緊張感を醸してくれます。がっかりするほど大人しい日本車のコンパクトカーとは一線を画した獰猛さで、操作を誤れば車体がバラバラになってエンジンがどこかに吹っ飛んでいくのでは?という気がします。ディーゼルの魅力ですね。個性もあれば欠点も多くある点がなんともマツダ車らしいと言うべきでしょうか?


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