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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

「レクサス」というブランドが決定的にダメな理由!!

  ニワトリと卵。それに近い関係だなと思うのが「ブランドとモデル」です。自動車産業の歴史を振り返るなんて情報化社会ではそれほど難しいことではないですけども、最初の市販モデルが出た黎明期に「ブランド」という概念があったとも思えません。試作されたモデルが試験的に販売されて商業ベースにのって・・・ある程度の資本を蓄えたメーカーが自社のモデルの販売促進に使う「演出」がブランドだったであろうことは想像が付きます。

  近年でもシトロエンがDSシリーズというオシャレなモデルを複数ラインナップして、その延長線上で「DS」という独立したブランドが成立しました。モデル→ブランドというのが自然な流れですが、そんな自然なブランドの「生成過程」をすっ飛ばしてブランド→モデルという暴挙に出た例もあります。もちろん1986年にアメリカ&カナダで展開を始めた・・・「アキュラ」です。

  モデル(製品)に先んじてブランド(広告戦略)が作られる・・・「商業主義」の暴挙と蔑まれそうな日本を代表するメーカーの暴走の理由は何なのでしょうか? 幸いなことにアキュラの母体となるホンダの創業者として知られる本田宗一郎氏、藤沢武夫氏の2人は、立志伝上の英雄として広く知られ、その魅力溢れる生き様について書いた本が多数あります。それを幾つか読むと・・・ホンダの経営の本質とは「時間の経過を克服する」ことにあったことがよくわかります。

  例えば、もともと二輪車メーカーとして出発したホンダですが、自前のディーラー網の整備を待つなどという時間のかかる発想は最初から全くなく、全国の自転車屋に「新型自転車だ!」と在庫を押し付ける形で代理店として使ったそうです。先行するメーカーを猛追するためには手段を選ばない戦略が不可欠だ!という経営のエグさをリアルに伝える逸話です・・・。他にも「マジかよ!」って話が続々と登場します。創業期に入社してホンダとともに歩んで行けば、驚異的な企業の成長とともに出世もして順風満帆な人生だったと思いますが、この2人が残した武勇伝だったり判断は背筋が凍るくらいにヤバいものです!会社もかなりスレスレのコトをやってますから。凡人ならすぐに「ブラック」だと言って逃げ出すでしょう・・・。

  今よりも銀行に人情味があってユルい時代だったから「手形詐欺」にならずに済んだだけ。コンプライアンスやら株主総会やらが面倒くさい現代では絶対に再現できないほどリスキーな方法で幾度となくピンチを切り抜けています。「健全経営」とかほざいている経営コンサルには絶対に近づけない「豪傑だけの世界」です。マスキー法の攻略によって北米でも名を挙げたホンダは、アメリカで勝つために二輪から四輪に軸足を移し、後発メーカーながらトヨタや日産を上回るスピード感覚で現地生産をも開始します。その勢いのままに「アキュラ」という自動車産業を徹底的に汚染する麻薬的なブランドを創業しました。

  このホンダの「アウトロー」気味な戦略が、アメリカではあっさり成功して、幸か不幸か日本の自動車産業のお手本になります。モデルの発売前にブランドが成立している!いつからこんな奇妙な事例が、自動車産業の常識(セオリー)になったのか? やはりいくら調べても調べてもアキュラ・・・が先例です。アキュラの3年後にレクサスとインフィニティが北米で開業。まったく同じ手法です。当時は日本の自動車メーカーの幹部が広告代理店的な脳みそ&倫理感しか持ち合わせていなかった・・・これはやっぱり不幸ですね。さらに続いた「ユーノス」「アンフィニ」に至っては大惨事になりました。

  どちらも今では忘れ去られたマツダ黒歴史です。「ユーノス」の広告塔が初代ロードスター、「アンフィニ」の広告塔が三代目RX7・・・これだけの歴史的な名車を配していながら大惨敗したわけですから、ホンダを真似たような本末転倒のブランド戦略そのものが完全に狂っていたわけです。

  アキュラ、インフィニティ、レクサス・・・いずれもメルセデスBMWをも凌ぐくらいの高い技術が次々と投入され、NSXやLFAといった世界を震撼させるスーパーカーすら擁していても、ブランドの名声が思ったほど高まらないのはなぜか? もう白々しいくらいに明らかですけども、「実体」のないブランドに寄せ集められた「烏合」のモデル群・・・それが全てじゃないかと。モデルを積み重ねること無しに「ブランド」は創れない!

  2000年に出版されたトマス=フリードマンの「レクサスとオリーブの木」という本があります。訳本しか読んだことがないので、著者のニュアンスは完全には推し量れませんが、その本のなかでグローバリゼーションの旗手とされた「レクサス」は、誰もが認める高い先進性と同時に、重大なる瑕疵が内在したブランディング戦略だと読めました。グローバリゼーションの「是非」という問題もありますが、特定のモデル・地域性・ユーザー(のライフスタイル)をコアとしないブランド戦略は空虚でしかない。

  レクサスにもフラッグシップモデルはありますけども、そこから特定の地域性やユーザーそれからキャラクターは出てきません。ランクルをレクサスへと編入していますが、本来ならば「ランクル」というブランドが出来るべきじゃないかと・・・。トヨタ、ホンダ、日産はそれぞれ「プリウス」「オデッセイ」「スカイライン」というブランドで出直さない限りは、メルセデスBMWのようなファンをたくさん獲得するブランドには成れないんじゃないかと思うのです。新興ブランド「ジェネシス」だって、ジェネシスというモデルを10年ほど売り続けてから成立しましたよ!・・・(たった10年ですけど)。


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