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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

シビックtypeRを買う前に・・・マクロ経済。

  シビックtypeRをなんで日本で作らないのかなー?近年のモデルもそうでしたが、英国製というのはなんか違う気がしますね。既存のあるいはこれから発売される『人々の関心が高いモデル』を見てみると、イギリス製ホンダ(typeR)&トヨタ(ヴィッツターボ?)、南アフリカBMW(2erクーペ、3er)、中国製メルセデス(Eクラス)、メキシコ製VW(ゴルフ)・・・それぞれに事情は異なるようですが、本国じゃ無いファクトリーを戦略的に使えるかどうか?が今後のブランドの浮沈にも関わってくる『国際分業フェーズⅡ』の時代です。

  北半球ばかりに資本が偏在して集積される問題、いわゆる『南北問題』が、自動車業界では改善されるどころかより一層深刻な状況になっています。トヨタ、フォード、GMの戦略転換でいよいよ『南で作ったら負け』がハッキリしてきました。斜陽産業と見られていう自動車ですが、当事者の危機意識は非常に高いようで、『外部』に由来するあらゆるリスクが現実となっても耐えられるような基盤設計を突き詰めると、社会問題への取り組みなんて言ってられないシビアな現実があります

  そこそこの歴史を刻んだ南の自動車生産国といえば、『南アフリカ』と『オーストラリア』です。両国ともに鉄鉱石の世界的な産地であり、他にもニッケル、クロム、マンガンなどの金属が手に入るというメリットもあって、複数のメーカーの工場が立ち並びましたが、トヨタ、フォード、GMが相次いで撤退を表明すると、潮が引くように市場環境が変化し、サプライチェーンが維持できなくなれば、有志の中小工場がいくら頑張っても生産は不可能になります。オーストラリアでは次々に閉鎖されいよいよ自動車生産工場が全廃される予定です。

  豪州は地勢的に不利なだけでなく、安定的に労働力を確保できない、自由貿易協定での対応が遅れているなど、様々な要因が重なって『負の連鎖』を起こしました。起死回生!!頼みのTPPもまさかの米国離脱で・・・豪州離れがさらに一気に加速したようです。トランプ当選の悪夢!? 『南アフリカ』も早くからメルセデスがCクラスの組み立て拠点を設けていて右ハンドル車のほとんどがここで生産されていましたが、その後拡張などはされず、メルセデスの主力モデル(C/E/Sクラス)の生産工場は北半球に乱立します。その後に作られたエジプト、ベトナム、タイ、中国、メキシコの工場が複数のモデルを作るのに対して、南アフリカはなぜかCクラスのみの生産です。

  G7と互角の経済規模を持つようになったブラジル(南半球最大値)ですら、鉄鋼の生産量は韓国の半分以下ですから、まともな自動車鋼材が手軽に大量に手に入る環境とは程遠いことが想像できます。世界生産の雄であるメルセデスはたくましいもので、ブラジルでもCクラスを作っています。南アフリカイーストロンドンに工場を持つメルセデスと、ロスリンに工場を持つBMW。それぞれCクラス、2/3シリーズを生産していますが、なんで上級モデルは作らないのでしょうか!?・・・家電化が著しい両雄の上級モデルでは新しい技術を盛り込むことでFMCを成立させている部分があって、あまり一般的ではない機材のサプライチェーンが成立しない南半球では生産が不可能の関係なんじゃないか?と思われます。

  南アフリカに変わって、世界が注目する生産国は、生産台数が1位の中国と6位のメキシコです(2〜5位は米日独韓)。それぞれ中国、アメリカの二大市場に納入する拠点としてベストな条件です。・・・がやはり過当競争になれば、軋轢が生まれその歪みが政治的に利用されるのは世の常で、それぞれ「チャイナ・リスク」と「トランプ・リスク」が顕在化しています。どちらも思いっきり尻尾を踏んでしまったのが、急成長のVWです。メルケルの保護の元にシェアトップを走っていた中国市場では、どこのメーカーのロビー活動かわかりませんが、DCTの不具合を中国当局によって厳しく叩かれました。

  アメリカではご存知の通り、排ガス問題で法外な制裁金とユーザー保証が計上され、さらに新大統領はメキシコ工場を利用するVW、フォード、GMFCAに対して厳しい姿勢を取っています。まさに弱り目に祟り目のVWですが、一部では排ガス規制は「内ゲバ」によるもので、復権を目論むフェルディナンド=ピエヒによる陰謀ではないかと言われています。この件で内部の政敵であったマルティン=ヴィンターコルンが失脚しました。

  (中国や)メキシコに巣食う『営利主義のメーカー』は、世界に不均衡をもたらす『悪』である!!トランプの舌鋒は鋭いです。日本メーカーでメキシコに工場を構えるのは日産、マツダです。社運を賭けた数千億円規模の投資が、新大統領の考え次第で簡単に吹き飛んでしまう!!これこそが世界の経済発展においては由々しき事態じゃないかと思うのですが、トヨタやホンダなどはどうやら一枚上手なようで、すでに『メキシコ・リスク』に関しても数年前から折り込み済みだったようです。

  2009年の危機以降、トヨタは新規生産ラインに否定的な姿勢を見せていて、徹底して危ない橋を渡らない方針を打ち出しています。VWトヨタ超えのために生産工場をやみくもに増やしましたが、その間にトヨタが行なったのは、設備投資による新工場建設を凍結し、自社の遊休工場を最大限利用し、さらに必要に応じて、スバルのアメリカ工場やマツダのメキシコ工場からOEMで供給を受けるなどのフレキシブルな生産体制を採っています。いわゆるアウトソーシングってヤツですね。

  トヨタ、ホンダ、ルノー日産、スバル、マツダBMWメルセデス。なんだかんだ言っても『勝ち組』ですねー。利益率2桁出せる総合自動車メーカー7グループ。愚直にラインを増やしてきたVWグループは、『外部』の政治的圧力などによって徹底的に叩かれました。出る杭は打たれる!!なのかもしれないですが、それでも『工場を建てる』という地域貢献の姿勢はなかなか素晴らしいなと思います。

  トヨタやホンダはコア市場でがっつり稼いで、遊休工場を使って『趣味のクルマ』を作る。日和見生産。景気が悪くなればさっさと撤退。暇だから作ってみた『シビックtypeR』を、50年以上に渡って作られ続けている『不滅のシリーズ・ポルシェ911』を同列で語っていいものかー・・・。ポルシェ、ジャガーマツダといったスポーツカーを作ることに『義務感』を持つメーカーのモデルがちゃんと売れるといいなー・・・なんて思ってしまう今日この頃です。


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