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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

トヨタよりもBMWがイケていると力説されても・・・。

  先日あるメディアで2014年度の自動車業界の「売上」やら「利益」やらがまとめられていました。さらに、とある一般メディアのライターが、「トヨタの稼ぎが1台当たり約20万円、BMWの稼ぎは1台当たり約50万円」と嬉しそうな文面で報じていて、「ドイツ車のブランド力に日本車は遅れをとっている!」みたいな結論を書いてました。このライターがトヨタBMWの実勢価格について詳しく知っているのかわかりませんが、多くのクルマ好きの感覚からしたら「意外とそんなものか・・・」と拍子抜けするデータなわけで、BMWは実はそんなにボッタクリではない?ということが判明した感すらあります。これに付け加えて昨年度のBMWの販売台数が過去最高を更新したということも強調されていました。地元の欧州では振るわないものの、日本や北米では堅調で、そして言うまでもなく中国市場での高級車販売が急成長を遂げていることが大きいようです。

  トヨタBMWも現在の好調な業績を支えているのが、全く挫けないスタンスで続けている「合理主義」です。まあどちらも業績好調ということなので「挫ける」理由もないですけど・・・。ちょっと振り返れば、2000年頃に訪れた「業界再編」の中でこの2つのメーカーは「他力本願」にならずに独自の理論で業界の将来像を正確に予測して、ファンを見殺しにするような「構造改革」を厭わずに踏み切っことが、この結果に見事につながっているように感じます。冷戦終結によって西側諸国にかつてのような経済成長の見込みがなくなり、必然的にそれ以外の地域で存在感を増しながらも、常に業界の話題の中心に居座ることが求められた「難局」を見事に乗り切りました。業界全体が大きな体質改善を求められる中で、VWのように安易に他メーカーを買収して、全く面白くないクルマを作る!というメーカーが多かったのですが、トヨタBMWは、なんと・・・わざとファンを「ガッカリさせる」クルマ作りを推し進めました。なんともえげつない話です・・・。VWが「ツマラナイ」クルマで途上国に活路を求めた一方で、トヨタBMWは「西側諸国の市場」で優位に立つための戦略を採りました。それが「わざとヘンなクルマを作る」作戦です。

  2000年以降に登場したトヨタ&BMWは、見事なまでに自動車好きに嫌われるクルマばっかりです。中古車市場で人気なクルマなんて1台もありません。クラウンも3シリーズもライバル車に比べて圧倒的に供給量が多いですから安値になるのは、ある程度は仕方ないことですけど。ここで面白いことに気がつきます。クルマ好きに「嫌われている」にもかかわらず、新車での販売は「ずば抜けている」のです。つまりトヨタBMWは「雰囲気」=ブランド力でクルマをせっせと売りさばいているのです。トヨタといえば「信頼」の代名詞であり、BMWといえば「高級輸入車」の代名詞・・・なんだかとっても馬鹿っぽいですけど、これが現実なんです。2000年代という「ブランディング」の時代の幕開けの勝ち組がトヨタBMWです。一方で「マニアック」の代名詞になった群馬県のメーカーや、「安売り」の代名詞になった広島県のメーカーや、「黄色ナンバー」の代名詞になった静岡県のメーカーは、クルマ好きからは圧倒的な支持を受けているわけですが・・・2000年代の大半を低迷の中で過ごしました。

  なぜトヨタBMWは成功したのか?それはクルマ好きを抜きにした一般ユーザによる「西側諸国の市場」は非常に硬直しているからです。また北米・欧州・日本ではそれぞれ求められるクルマが同じではなかったりします(全然違う!という誇張はやめよう)。基本的にはどこの市場も非常に「成熟」しているので、小手先の「迎合」(クルマ好きに媚びる)ではもはや何もひっくり返らないです。実際に「35GT-R」なんてもの凄いクルマが作られたりしましたが、一般ユーザーレベルでは全くと言っていいほど何も起きませんでした! リーマンショックで全てが水泡に帰した!という意見もありますが、この10年でトヨタが驚異的に躍進をしたのは事実です。トヨタにとっての2000年代とは何か? それは某メガヒット車に対してデビューから浴びせられ続けた痛烈な批判に、徹底的に無関心を装いながらも耐え続けて、そのコンセプトを全くブレさせずに足掛け18年間売り続けた「信念」にあると思います。こういう狂気に満ちた「決断力」がカチコチに硬直した市場をも動かしたわけです。

  同じようにBMWも従来の「高級&スポーティ」なイメージを崩壊させるように、スモールサイズの「1シリーズ」「X1」の導入しました。多くのBMWファンが「これはちょっと違うな・・・」と大きな疑念を持ち、中には離れていった人もいました。「普通のクルマ」に成り下がった3シリーズにも使われていますが、2007年に投入された新型プラットフォーム(BMW・L7シャシー)が出てからは、割とどんな貧相なエンジンでもそこそこ走ってしまう「らしくない」身軽さが残念過ぎるモデルが増産されています。「こんなBMWはイヤだ!」と言ってみたところで、「3シリーズ"リムジン"」の日本仕様には4気筒とHVしか用意されなくなりました。けれども「イヤだ!」っていうガヤガヤした意見は結局のところ「私は本質を愛するクルマ好きです!」という必死なアピールに過ぎず、あくまで「建前」にすぎません。頭では直6じゃなければBMWじゃない!と言いつつも、所有して長距離ドライブを心ゆくまで楽しみたい人の多くは、燃費なんて気にしない「金持ち」以外は「320d」へと吸い寄せられていきます。別に320dユーザーに対して「魂を売った愚か者」と批判するつもりはないですけど、BMWはユーザー心理につけ込んだ「確信犯」なんですよね・・・「BMWのファンに気合の入っているヤツはいない」ってメーカーが完全に見抜いているわけです。

  ブランド価値をうまく保持したままに、幅広い価格帯のクルマを展開する・・・なんてどこのメーカーでも考える当たり前の戦略なのですが、BMWほどの有名ブランドになると、安易な廉価モデルの投入がブランドイメージを失墜させることにもなります。1シリーズは厳密にはE46世代の3シリーズに設定されていた、ショートボディのグレードを独立させたものです。しかし1シリーズに改名するとともに、ボディはよりスモールカーらしいハッチバックとなり、従来のBMWのイメージとは完全に違うクルマが出来てしまいました。当然ながら発売当初はそれほど売れずに、もしBMWが1シリーズのハッチバック化を早々に撤回していたら、完全に黒歴史と変わったかもしれません。しかし当時のBMW首脳陣はというと・・・あの奇才デザイナー・クリス=バングルを擁護し続けたイカレっぷりですから。しかし周囲の反応(かの有名な「BMW物語」もこの時期のBMWを痛烈に批判)に全く耳を貸さないで「イカレた」デザインのBMWを発売し続けると、硬直した市場が動き出すから不思議なものです。日本人デザイナー永島譲二がデザインした栄光の「E39」は素晴らしかったのですが、次のE60になって一気にオーラが無くなった5シリーズはもう誰も見向きもしなくなりました。

  BMWのユーザーは当初はセカンドカー以外の用途に、1シリーズを考えることができなかったようですが、しだいに高齢者や女性を中心に広まり始め、現在ではいい年齢のおっさんが乗っていることも珍しくありません。今だにそんな光景を見かけると「日本の恥さらしだな・・・」なんて気分にもなったりするのですが、もうそんな考えこそが古いのかなという気がします。私の体感では1シリーズユーザーは、40~50代の女性が多いように思いますが、X1や2アクティブツアラーに関しては男性ユーザーの割合が非常に高くなっています。もはや時代は完全に変わっていて、E39やE46の頃のBMWはこの世界から消え失せ、「バングル以降」のクルマ、つまりBMWのマークを付けた「何か」が日本の道を我がもの顏で走っています。その姿を見てクルマ好きは大いに嘆くわけですが、BMWの業績は今日も絶好調・・・なんですかね?たぶん。


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