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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

アウディTTスポーツバック 斜陽気味のブランドを救うかも!?

  あえてゲスな言い方をすると、右も左もわからない大学卒業したばかりのクソガキが、何となく憧れるブランドがアウディだと思います。2010年くらいまでは「これに乗れる大人になりたい!」はごくごく自然に芽生える感情でした。メルセデスBMWとは一線を画した「新鮮さ」「若々しさ」が込められたデザインは、20歳そこそこの若者が乗っていても違和感のないセンスの良さが際立っていました。しかしここ数年のアウディはそれまでが嘘だったかのように、輝きを失ってしまった感があります。デザインの正常進化を期待する声とは裏腹に、モデルチェンジは遅々として進まず、日本人デザイナー・和田智の手により2005年に発売されたアウディA6から派生したデザインコンセプトが、新たに発売された3代目TTにも引き継がれています。

  アウディの「古典」デザインが日本人デザイナーによって産み落とされたという事実には、もちろん多少は興奮するのですが、2000年代前半のスケッチが描く「近未来的デザイン」は、あまりにも無邪気で屈託がなく・・・それゆえにガキっぽいかもしれません。一度そう感じてしまった人は、アウディデザインを見る度にイヤなイメージが沸き起こってしまうはずです。「お願いだからデザインを更新してくれ・・・」と懇願する間もなく、レクサス・マツダ・スバルがその心の隙間を埋めてくれた今となっては、アウディA4アバントの代わりにレヴォーグを選ぶこと自体が自然なことに感じます。

  2005年以降のアウディの勢いは本物で、それまでの自動車メーカーには見られなかった、コンセプトに忠実な「リアリズム」路線はレクサス・マツダ・スバルに大きな影響を与えたはずです。前田育男氏をデザイン本部長に据えたマツダの「魂動」は、意地悪く言えば和田智氏の方法論を全面的に踏襲したものです。和田コンセプトの寿命が5年程度だったと結論すると、前田コンセプトも同様に5年の間は第一線を走り続けられるでしょうか・・・それとも2番煎じということで非情にも3年へとスパンは短くなってしまうのでしょうか。

  またまた下世話な言い方ですが、高級車のニーズや魅力とは成熟市場でも新興市場でもかわらず、「貴族趣味」を端的に表現できることにあります。自動車メーカーそれぞれの市場規模などまったく知らない人々にとっては、メルセデスBMWアウディという「ブランド」から自らの貴族趣味ニーズを満たす要素を十分に感じ取れるでしょう。しかしもう少しクルマの知識が付いてくると、それらのブランドは一部の上級カテゴリーを除いては、貴族的な価値観とは真逆の「擬装化」されたグローバリズムでしかないことに気がつきます。それはレジャー活動のクーポンをまとめ買いさせる「会員制〇〇」みたいなものです。余暇活動の充足は貴族的に思えますが、よくよく考えると商業主義の匂いがする大衆行動に過ぎません。「行きたいところに好きなときに行く」という精神的な健全さとは全く逆の消費行動と言えます。

  「JRやANAに余暇の行き先を決められる窮屈さ(奴隷的拘束)から開放されたい!」というのが、都市在住のクルマユーザーが周囲に馬鹿にされながらも「所有」に拘る理由の1つです。しかし公共交通という名の「営利企業」から逃れた先には、自動車メーカーという別の「営利企業」が立ちはだかります。20歳そこそこの若者ならば、50万円程度で買える中古車でBMWアウディを探して乗り潰すのもアリだと思いますが、30歳を過ぎるとさすがにクルマ弄りをしてばかりもいられないので、「新車保証」の付いた安心できるクルマを選ぶ必要が出てきます。そして輸入車ディーラーに足を踏み入れた瞬間から、予想外の精神的苦痛が次々と襲ってくるわけです。詳しくは必死で輸入車を買い続けている人のブログをいくつか読んでみてください。

  メルセデスBMWアウディのユーザーにとって安息できる場所(車種)はほとんど用意されていません。500万円払ったところで満足度なんて想像を絶するほど低いです。軽自動車やコンパクトカーを無意識の内に下に見て自分を慰める人もいるようですが、大金を払ってまでそんな「大衆的」な視点を持たされていることが、「擬装化」されたグローバリズムによって消費活動を大きく浸食されている証拠と言えます。これらのプレミアムブランドは常にユーザーを脅迫し続けます。すこしでもマーケティングの知識があれば、クルマに使える顧客の資産を徹底的に搾り取るかのような意図が見える価格設定に気がつくはずです。

  私はこの手の脅迫を受けることがとても嫌なので、購入に際しては必ずそのブランドのフラッグシップモデルしか購入対象にしないようにしています。最初から「出口」のクルマを買っておけば、ディーラーは他ブランドへの流出を恐れてモデルチェンジの度に購入インセンティブとして特別割引をいつもオファーしてくれます。マツダだったら「アテンザ」、スバルだったら「レガシィ」か「WRX」がフラッグシップになるわけですが、これがアウディだと「A8」「A7」か、RSグレードのクルマが該当します。「RS5」や「TT-RS」は確かに魅力ありますが、いざ買うとなると軽く1000万円を超えます。これでは「貴族趣味」ではなく「ガチ貴族」ですね・・・。

  600万円くらいしてもいいからもっと気楽な「出口」っぽいクルマを出してくれないかな・・・という淡い期待をメルセデスBMWアウディに寄せている人は結構多いと思います。BMW320dや523dといったディーゼルグレードはそんな声に少しは報いていますし、メルセデスの新型Cクラスにも来年にはディーゼルとHVが導入されれば新しい展開を迎えるでしょう。さてアウディですが、新たに発表されたTTスポーツバックという5ドアモデルがVWグループが掲げる「デザイン・フラッグシップ」という概念を大きく宣伝することになりそうです。「VWザ・ビートル」と「アウディTT」の2台はMQBの「同一ライン作り分け」のメリットを生かして、同ブランドのポロ、ゴルフやA1、A3のスペシャルティモデルとして、グレードがさらに充実されるようです。

  趣味のセカンドカー的要素が強かったTTのホイールベースを伸ばし、A3セダンのような1stカーとしても耐えうるユーティリティーを確保した「TTスポーツバック」が市販されれば、もっと気楽にアウディ・ディーラーに行く事ができるようになりそうです。もっとも販売価格がいくらになるかはまだ分らないですが・・・。


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マーケティングの名著らしいです。試しに読んでみたら真っ先にアウディを想像してしまいました・・・。