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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

ゴルフGTIが示すVWの現在地

  輸入車ブランドとして日本市場でメルセデスBMWを抑えてトップシェアを誇るVW。”強さ”の秘密は「ブランド発信力」やマ◯ダもびっくりの「スペシャルオファー」などいろいろあるようですが、純粋にクルマの実力をかなりのものがあると思います。さてこの欧州きっての大衆ブランドが、世界のどこよりも精緻に作られる日本のトップレベルのクルマと比較したときに一体どれほどのものなのでしょうか?・・・といってもVWのクルマは、他ブランドとの単純比較が難しいのが特徴で、特に日本車とは排気量やミッション形式の違いがあってなかなか難しいものがあります。ゆえに安易な比較には”恣意的”な要素が介入してしまうので、なかなか説得力を持たせる比較をするのが難しいです。一体VWが日本社会に生きる人々に与えられる喜びとはどのような類いのものなのでしょうか?

  そこでVWユーザーがどことなく長所に挙げている点を考慮したシチュエーションであれこれ比較してみました。初めに結論を言ってしまいますと、結果はそのものズバリ・・・「スカイライン350GT > アテンザXD > WRX S4 > ゴルフGTI」という序列になります、この相対的な位置関係は現状ではどうあってもまず覆ることはないかなという気がします。日産、マツダ、スバル、VWのイメージリーダー的車種同士で比べてみたのですが、各ブランドが考える上質感の基準がそれぞれのクルマに色濃く出ているように感じました。日産は宣言通りに「極上」を追求してますし、マツダは狙い通りの「上質」、スバルは守るべき個性を感じる「堅実」で、VWは大変に失礼ですが帳尻合わせの「妥当」でしかないです。

   スカイライン350GTからは日産の絶対的な自信に裏打ちされた確信を感じます。この「極上」のスタンスで今もクルマを作っているブランドは、乗用車主体のメーカーでは「レクサス」「マセラティ」「ベントレー」くらいだと思います。1800kgの重量を全く感じさせない加速・制動・旋回の3拍子揃った総合レベルの高さは、他のメーカーが真似したくても近づけないレベルです。そんなクルマが500万円で買えてしまうのだから、まだまだ日本も捨てたもんじゃないですね。これはせっせと貯金に励んで買える内に買ってしまったほうが良さそうです。

   マツダはまだまだ日産の領域にはほど遠いですが、それでも必死でユーザーのニーズに応えようという姿勢は素晴らしいですし、何より周囲の期待を2回りくらい上回るクルマ作りを案外あっさりとやってのけます。実際に現代人の様々なライフステージを鮮やかに照らす「幸せのクルマ」を作ろうというコンセプトの元で、ヒューマニズム溢れるスピリッツを見事にアテンザXDに投影したと思います。福野礼一郎氏が事あるごとに「BMWディーゼルほどにCX5以外のマツダディーゼルはスピード感が無い」と漏らしていますが、それもそのはずで3シリーズに比べると「上質」を追求しているアテンザは静音やスタビリティといった高級車的なスペック値の基準が高く、実際に運転しているとスピード感をあまり感じないままに相当なスピードが出ていたりします。

  後述するWRX S4やゴルフGTIですが、このスポーティな2台は装備されているSモード(S#モード)での鋭い加速は楽しいですが、どちらも60km/hを超えたあたりから早くもピッチ感とロール感を頻繁に感じるようになります。アテンザでの100km/h時の騒音&揺れがこの2台では60~70km/h程度で発生します。スポーティを売りにするクルマと上質なセダンを目指すクルマの方向性の差が明確に感じられます。最近多くなっている400万円程度のスポーツカーもどきのクルマは、どれもドライバーの五感を過剰なまでに騙すような味付けに頼るものばかりです。ターボであることを肯定するための「Sモード」だったり、エキゾーストを車内に取込む安っぽい演出などなどいろいろあります。楽しんでくれるユーザーがいる反面、クルマに本質性を求めるユーザーにとっては、「ヴァーチャルな演出」に気分を良くするなんて、家でグランツーリスモやってるガキと大して変わらないのでは?という疑念を感じるでしょう・・・。

  アテンザXDは日本にいるとまだまだ特異な存在で分りにくいですが、現行モデルは欧州市場でメルセデスマセラティアルピナが主力に掲げる「ディーゼルサルーン」にかなり近い世界観を達成しているように思います。「ヴァーチャル」な320dで大興奮して、どこまでも「リアル」なアテンザXDが物足りないなんて・・・いくら福◯さんでも痛すぎです(失礼ですが言わせてもらいます!)。マツダの製品企画を担当するオーガナイザーにしてみれば、VW・スバル・BMWのような小手先のクルマ作りは言語道断とは言わないまでも、マツダの目指す方向ではないと確信しているはずです。クルマの本質で勝負するだけだから、基本設計とエンジン、そして内外装デザインの世界観だけをストイックに磨けばいいわけです。このマツダのように「上質」こそを是とする考えは、他にも「メルセデス」「ジャガー」といったブランドに共有されていて、これらには自らが掲げるコンセプトとそのセンスだけを頼りに市場を切り開く孤高の「意志」を感じます。

  さてここから先はやや悪口になってしまうかもしれませんが・・・、新登場のスバルWRX S4は残念ながらブランドが掲げた「上質」という宣伝文句には、現段階ではほど遠い存在でしかないようです。スバルが三菱と競うようにラリー仕様のAWDターボを開発するのに長い期間を要したのと同じように、「上質」なサルーンもやはりすぐに作れるものではないのでしょう。「スポーツ車」の開発こそが崇高で価値のあることであって、「オッサン車」と蔑んできたセダンの開発を、もしかしたらスバルは甘くみていたのかもしれません。とりあえず現時点では日産・マツダの足元にも及びません。シーマ・セド/グロやルーチェ・ユーノス800を作ってきた歴史は現在でも大きな遺産になっているようです(三菱にもセダンの復活を期待したいですね)。スバルとしては得意分野を生かして、「WRX=最高のスポーツ車ブランド」として自信持っていればいいものを、伝家の宝刀WRXを使っての「上質サルーン」アピール戦略はスバルの栄光の歴史に泥を塗ったかもしれません。

  それでもスバルはWRXの開発においてブランドの尊厳を大筋で守りつつも着実な一歩を踏み出しています。クルマのキャラクターを大きく損なうことなく、先代の大いなる失敗作である”A-line”のコンセプトを意地でも認めさせようと奮闘している点は多く見られます。ガチガチに固められていた足回りは、なんとかマツダボルボの領域に接近したものへ近づけてきました。まだまだロール幅自体は限定的なものですが、ドシン!バタン!とタイヤを不整路に叩き付けるような豪快な走りは影を潜め、路面にタイヤを擦り付けるような高級車的な走りに大きく接近しています。しかしスポーツ由来の素性は簡単に隠せるものではなく、ジオメトリー変化に乏しいリアサスペンション辺りから伝わる”軽い”ニュアンスは、日産やマツダマルチリンク装備車のものとはだいぶ違うので、それが走りの軽さと受け取る人も結構いると思います。そして最も高級車として興を冷めさせてくれるのがやっぱりCVTです。まだまだ全然仕上がっておりません・・・。

  WRX S4の至らない部分を見事に解決しているように見えるのが、ゴルフGTIです。スモールカーらしい軽快さは付いてまわるものの、DCT(湿式DSG)の変速スピードは見事なもので、「Sモード」に切り替わる速度もWRX S4よりも断然にスピーディです。車重から考えても余力十分な2Lターボを低速トルクに特化させたパワートレーンのおかげで、ちょっと人聞きが悪いですがこのクルマは「試乗スペシャル」に仕上がっています。VWの考え方として全てのクルマユーザーに訴える全方向的なクルマ作りはしないようです。よってこのゴルフGTIもCセグ以下の国産車ユーザーにとっては間違いなく目からウロコの出来映えですが、上級セダンユーザーから見れば居住性・ハンドリング・走行性能のどれもが中途半端なものに感じるので、とりあえずは購入対象にはならないでしょう。

  ゴルフGTIは確かにWRX S4よりもよく出来ている点が目に付きますが、残念なことにベース車両がいかんせん安っぽすぎます。WRX S4はオリジナリティ(スポーツ走行性)を失わないように配慮しつつも、長距離ツアラーとしての基本性能をあらゆる面から追求していて、その結果まだまだ成熟不足といった印象ですが、ゴルフGTIは最初からベースの部分に手をつけることは放棄しています。クルマの方向性としてはコンパクトカーをサーキット向けに戦闘力を高めることに重点をおいています。そしてドイツ車が本来もっている洗練された足回りと剛性感のある車体で強化されたエンジンパワーを見事に支えていて、その総合力こそがこのクルマの最大の評価点です。しかしこの段階までは先述の日産・マツダ・スバルも味こそちがいますが完成度は十分です。ゴルフGTIはベース車の基本性能を「走り」の面で大きく洗練されたものにしていますが、それ以上のことには関知しないというブランドの方針が横たわっているのもまた事実です。WRX S4は従来のベース車であるインプレッサとは別の設計に舵を切って「上質」を名乗ろうとしましたが、ゴルフGTIはベース車との切り離しは現時点では全く想定していないようです。結果的に、程度の差こそありますが本質的にはスズキ・スイフトスポーツやホンダ・CR-Zのような一人で乗るにはそれなりに楽しいであろう「妥当」なクルマになっています。

  スカイライン350GT、アテンザXD、WRX S4、ゴルフGTIの4台はいずれも見積もれば400万円を超える決して安くないクルマですが、それぞれにメーカーの目指す理想が追求されていて、どれもコスパに優れた「価値ある」クルマです。しかし4ブランドがそれぞれ目指した「領域」は明確に違っていて、ユーザーの嗜好も千差万別ですから、それぞれにコアなファンを獲得できると思います。最後に異論反論が噴出するかもしれませんが、同じ方向性のブランドをカテゴライズすると、「極上」クラスは日産・レクサス・マセラティベントレーです。「上質」クラスはマツダメルセデスジャガーアルピナ。「堅実」クラスはスバル、BMWアウディボルボ。「妥当」クラスはVW、ホンダ、スズキ、プジョーシトロエンルノーフィアット、ミニ、アルファロメオです。あくまで現在のブランドイメージを牽引するモデルの方向性を分けたものに過ぎませんが・・・。


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