ちょっと偉そうな言い方なんですが、BMWはやっと気がついたようです。新しい2シリーズクーペのCMはなかなかシュールなのですが、あの映像の中にBMWがこのクルマで表現したい要素がふんだんに織り込まれています。BMWは自分達がどういうクルマを作ったら喜ばれるのか?ということに低迷して初めて向き合った・・・。そして6シリーズや4シリーズ、そしてZ4はBMWの本質ではないということに気がついたような気がします。
メルセデスの後を追っかけて高級車のフルラインナップを目指した90年代。より実用性を高めたラインナップで安易なシェア拡大へ走った2000年代。もちろんBMW以外のブランドもそれぞれに方向転換を繰り返し毀誉褒貶を受けてきたわけですが、ドイツのスペシャリティカー・メーカーとして求められている本来の役割へと回帰しましたよ!というメッセージをまず第一に感じます。
BMWミニを入れてもグローバルのBMWシェアはメルセデス、マツダ、スバルと同水準でしかありません。メルセデスは未だに迷走から脱出できず、マツダやスバルは車種を最小限に絞って「世界に最も求められるクルマ」を念頭にした開発を行うようになりました。一方でメルセデスやBMWはマツダ、スバルの数倍に及ぶラインナップを展開していますが、過去10年の北米でのレクサス、アウディの成長をみれば、自動車産業の「巨人」トヨタ、VWとの戦いで特に高級モデルで劣勢に立たされている現状がわかります。
マセラティ、ベントレーと並ぶ水準のラインナップに実績があるメルセデスならともかく、BMWにとっては経営(ラインナップ)の見直しが急務なわけですが、すでに1000万円を超える超高級車を展開しているブランドが300万円のクルマを売るにはそれなりの戦略が必要です。そこでBMWが採用した新たなコンセプトがこのCMの中で表明されています。「BMWは爆撃機メーカーではなく、戦闘機メーカーだ!」というBMWの原点に立ち返った結果作られた映像が、まるでスズキ・スイフトスポーツのようなソリッドな高速ターン!
バカが真似するからよせ!という意見もあるかもしれないですが、スイ=スポがOKなら問題ないだろう。ただしスイ=スポのようにハチャメチャなアングルの切り替えではなく、インテリジェンスを強調した「静」から「動」へ切り替わるモーションはBMWが本来持つ「アジリティ」と「パワー」の復活を予感させます。レクサスISやスカイラインによるBMW主力の「3シリーズ」への猛追がありましたが、これを華麗に躱して・・・この2シリーズクーペでFR車の「スポーティネス」を改めて強調し、シニカルにもISやスカイラインの源流である「アルテッツァ」や「スカイラインGT-R」を連想させるとは・・・。「直列6気筒ですよ!」「MTだってありますよ!」というわけです・・・。