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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

中国市場 日本メーカーの販売台数が軒並み「昨年対比200%」な件

  中国はアメリカに迫る世界最大級の市場に成長しつつあることは間違いないのですが、各社の販売台数の変動を見てみると一般的ないわゆる「市場経済」の社会とはだいぶ違うことがわかります。2013年の中国市場でのナンバーサプライヤーはドイツのVWです。当月で約18万台を売り上げていますが、昨年比では10%を超えるマイナスです。ということは2012年11月期では20万台近くの販売をしていたことになります。VW単体での販売台数はグローバルでもせいぜい40万台程度なので、中国市場で約半数の売上を稼ぐのがこのメーカーの真の姿です。ちなみにアメリカ市場ではアウディと合算しても僅かに5万台しか売れていません。日本メーカーで「中国>米国」の売上を記録しているのはスズキのみで、グローバルメーカーではヒュンダイとキアとPSAがこのタイプです。

  日本メーカーの中国市場での売上が、昨年同月比で日産211%、トヨタ186%、ホンダ205%となっています。3社ともに中国での販売は横一線で、2012年11月が約5万台で2013年11月が約10万台へと「倍増」しているわけです。なんともダイナミックな動きです。日本でもメーカー自身の不祥事で売上を大きく変動させたメーカーはありましたが、日系企業が横並びでまるで見せしめのように売上減に見舞われ、ほぼ同じに回復する足取りは、まるで消費そのものが今でも中国政府の計画経済の上で行われていることが伺えます。中国で販売される日本車のほとんどが現地生産です。先日、アメリカの新興EVメーカー「テスラ」が中国国内での発売に先立ち、新車販売価格の内訳を詳細に発表しました。

  これによるとアメリカと全く同額の81,070米ドルの新車価格に中国までの輸送費が3,600米ドル。それ以外に中国政府から課せられる税金が関税と付加価値税合わせて36,700米ドルなのだとか。無理に輸出しようとすれば本体価格の約45%を中国政府に搾取されるのですから、月販10万台規模となれば現地生産しか方法がないわけです。そもそも関税と付加価値税の2重課税なんて一般的なOECD諸国の商習慣にはないものです。ちょっと前の話ですが、レクサスやインフィニティは、近い将来に中国での生産へ踏み切るという主旨の発表がありました。その経営判断の伏線には中国政府の課税制度が大きく影響していたのですが、日本経済新聞など大手メディアは単に中国の経済成長のみを理由として挙げていたのが印象的でした。おそらく中国政府に遠慮して意図的に情報を隠したのでしょう。

  日本メーカーにとっては経営リスクが非常に高い中国での自動車販売の比重を増やさず、ASEANや南アジア、西アジアでの20億人市場に期待すべきだという論調も同時に見られたりするので、もしかしたら日経新聞も中国の課税制度についてよく分かっていなかった可能性もあります。しかしこの大手経済メディアが伝える「代替案」には中国市場以上の大きなリスクがあります。これらの地域では中国以上に悪質な課税を行っていたり、ベトナムなどでは課税制度そのものを見直して「改悪」しているケースもあります。

  日本人は海外でどんなクルマが売られていても大して気にならないかもしれないですが、今後このような地域での活動を強化していく自動車メーカーにとって経営リスクをヘッジするための手段として、グローバルモデルの徹底したコストの見直しが必要になります。1年先の販売の見通しが立たない地域に、日本で普通に売られている安全水準のクルマをそのまま投入することは難しくなります。よって現地のインフラも十分でない生産工場に委託できるような簡易パッケージのクルマが今後増えてくることが予想されます。特にVWやPSAなど北米で完全に頭打ちになっているメーカーのクルマの作りはもの凄いペースで簡素化されています。

  日本メーカーでも北米からアジアへのシフトを鮮明に打ち出しているのが日産と三菱です。すでに日本市場でも低価格の逆輸入モデルが販売されていますが、あまりの低品質でこのクラスのクルマとしては大惨敗と言える状況です。まだまだ日本人の品質に対する要求が高いことで大きな問題にはなっていないように思います。しかしマーチやミラージュのライバルとして現実にインドで50万円、ドイツで100万円で売られているVWのクルマに150万円を出す物好きな人もかなりいたようですし、このクルマを「黒船」と絶賛した愚かな自動車メディアも多数ありました。日本の自動車文化を劣化させるこれら脅威に対してこれからも警告していきたいと思います。



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