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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

VWゴルフの「謎」

  7世代に渡って日本に導入されているVWゴルフ。定番の輸入モデルとして街中でもかなり頻繁に見かけますけども、皆さんは見てすぐに何代目なのかわかるでしょうか!? ざっくりデザインを見ると、1st&2ndと3rd&4th、5th&6thが同じコンセプトで作られているのがわかります。現行の7thは6thのデザインによく似ているのですが、有名になったMQBというプラットフォームが使われていて、中身は大きく刷新されています。

  スチールのモノコックで旧車な佇まいの1&2世代。樹脂パーツヘッドライトが80年代のネオクラシック感を漂わせる3&4世代(デビューは1991年なんですけどね)。そして90年代以降のトレンドをまとった5、6、7世代といった感じで大まかに見分けがつきます。乗って見ると1st〜4thは、輸入車独特の荒々しいエンジンフィールが魅力で、エンジン音もガンガン入ってきます。特に2ndが個人的には一番印象深いです。

  5th以降は良くも悪くもトヨタ、ホンダらしい味になります。4th以前と比べると「洗練」という言葉が浮かびますけども、なんか大事な「個性」が転がり落ちてしまった気もします。スモールカー(Cセグ)を意識させない高級感を目指してボデーやエンジンの質感を高める方針は、同時代のカローラシビックと同じアプローチです。

  カローラハッチバックを投入してドイツでも売られるようになったのは1998年で、ゴルフ4thの時代でした。シビックは英国のローバーMINIと協業に入りやや停滞し、ゴルフは80年代シャシーを使ったまま放置。他の欧州メーカーも一様に停滞気味で、アルファロメオ147が欧州でも日本でも人気を博していました。トヨタにとっては千載一遇のチャンスであり、ゴルフの設計をコピーしてカローラランクス/アレックスというハッチバックモデルを『欧州カローラ』として市場に投入します。

  そのトヨタを完全に出し抜いたのが欧フォードで、Cセグの定番モデルだったエスコートを改め、全く新しいシャシー(C170)を使った「フォーカス」として登場し、またたく間に人気を博しゴルフから欧州販売ナンバー1の座を奪い取る大ヒットと遂げます。他の欧州メーカーと同じで欧州向けのエコノミーなモデルを手堅く作っていた欧フォードが、なぜ突然にホンダなど日本メーカーが独占的に使っていた「4輪独立懸架」を持ち込んだのかは『公然の秘密』です。以前にこの辺の事情を考察する記事を書いたところ強烈に批判されたことがあったので、今回は伏せておきます。

  ここから先は『葬られたゴルフの黒歴史』でありまして、2003年に発売される5thゴルフを作るにあたって、VWは欧フォードのエンジニアを露骨に引き抜き、設計を徹底的にパクリます。つまり現在のVWゴルフの設計の原型は、フォードの『C170』及び『C1』プラットフォームとルーツは同じと言えます。ちなみに『C1』は今も現役バリバリで、フォーカス以外に、ボルボV40やレンジローバー・イヴォーグに使われています。

  VWゴルフは「Cセグのベンチマーク」とよく言われます。スバルやマツダが新型モデル発表時にゴルフをベンチマークしました!!と宣言したりするので、これを今更否定するつもりもないです。しかしいつの時代もVWゴルフが「時代の先頭にいた」とか書いているライターを見かけると、「なんで!?」って思ったりします。

  ゴルフ1stの登場は1974年です。しばしばこのモデルから世界のCセグハッチバックは始まった!!みたいな描かれ方をしていますが、ジウジアーロがデザインを手がけた1stモデルは2年前に登場したルノー5(サンク)の影響を受けていることが見受けられます。ちょっとややこしいですが、1972年にサンクの他にシビックプジョー104が相次いで登場します。その中でも特に大ヒットした『サンク』の成功に刺激を受けてVWゴルフはその後の1974年に誕生した!!というのが定説になっているようです。

  サンクの大ヒットの後から出てきたVWゴルフは、フランス国営のルノーを徹底マークして、欧州の覇権を握ります。発売直後から日本への輸出も始まり、サンクの日本導入はそれよりも遅かったようです。VWで最も知名度を誇るゴルフに対して、ルノー史上最も影響力があったと言われるサンク。ゴルフの初期の頃は、ゴルフとサンクが、カローラとサニーみたいな関係で発展しました。ゴルフGTIに対して、サンクターボ、サンクアルピーヌがありました。スプリンターとラングレーみたいなものですね。

  日本の年配のクルマ好きがゴルフを贔屓にする理由がたぶんコレだと思われます。余談ですが21世紀に再びゴルフvsサンクの後継モデル同士の「新型ポロGTIとルーテシアRS」の争いが来年には実現すると思いますが、どういう巡り合わせか「GRヴィッツとマイクラNISMO」も同時に始まるかも!?

  さて日本市場でもその動向が注目されるVWゴルフですが、このクルマ(シリーズ)の特徴をまとめると、「つかみどころがない」=「柔軟性が高い」ってことなんじゃないでしょうか!? 70年代80年代はヤンチャでした。それを知っているから年配の人は若者にはなかなか共有できない高揚感があるのだと思います。90年代に絶望を体験し、2003年に華麗に蘇って以降のVWゴルフは「堅実」なクルマになりました。だから若者にはどうしても地味なモデルに映る(実際に地味なんだよ)。

  だからといってゴルフが『ブレブレ』のモデルというわけではないです。スモールカーとして登場しながらも、パッケージを大きく変えることなく、「アウトバーン民主化」「クラウンに負けない静粛性」と念頭に置いて進化してきた!!と言われれば、確かにそーだよな。アメリカで売られているドイツブランドのFF車なんてVWアウディ『だけ』だった。

  ゴルフの設計の元となったフォードにトヨタ、ホンダ、日産、ヒュンダイ、キア、といったFF車の精鋭ブランドを相手に世界のメージャーリーグであるアメリカ市場で戦える欧州勢がVWだけ。これこそが高い技術力とマーケットに沿った正常進化の証です。VWにはフィアットやPSAにはない「パクる」という、どっかの自動車強国のメンタリティが十分に宿っている。素晴らしいことだと思います。

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