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はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

レヴォーグ と アテンザワゴン が カローラフィールダー や ゴルフヴァリアント とは次元が違うという話。

  ちょいと堅苦しい話なんですが、最近のスバルとマツダのシンクロナイズドした中型車の改革についてとっても興味がありまして、それについて書いてみたいと思います。

  これまでセダンとワゴンは長らく中型車の2大ボディタイプ主流でした。しかし同じボディタイプのクルマを作り続けるのが好きなドイツのプレミアムブランドも、販売の伸び悩みに直面しつつあるようで、新たなボディタイプの中型車をデビューさせる動きが活発化していて、現在では「4ドアクーペ」「シューティングブレーク」「クロスオーバー」が一般的に認知されるようになってきました。どれもハッチバックゲートを持つ2BOX車に分類されるのでワゴンに近い存在ながら、見た目はセダンのような伸びやかなデザインのものが多いようです。

  レヴォーグにアテンザ、そしてドイツ勢の近年の新型ワゴンを見ると、ワゴンだからといってもデザインがまったく妥協できない、なかなかシビアな時代に突入しています。この変化をざっくり言ってしまうと、一般にクルマに対する考え方が柔軟になって、SUVだろうがワゴンだろうが高級車として受け入れられる一方で、そういったクルマにはそれを納得させるだけの「矜持」をユーザーに感じさせることが要求されるようになりました。

  ワゴンの高級車に容赦なく要求されるものは、「セダンではなくワゴンを選びたくなる”何か”」として追加されるアピールポイントであり、同時にそれは最近のコンパクトカーにありがちな「見た目重視」の小手先の小細工ではなく、よりクルマにとって本質的な部分での説得力に重きをおいています。カローラフィールダーやゴルフヴァリアントのように、派生モデル的に作られた印象が強いCセグワゴンはお手軽な価格設定がウケて人気みたいですが、やはりクルマにある程度のステータスを求める人にとっては全く食指が動かない部類に入ります。

  自動車メーカーもその点に関しては完全に解り切っているようで、コンパクトカー(Bセグ)あるいはスモールカー(Cセグ)をベースにしたワゴンは、シャシーの貧弱さをある程度まで補強して使います。ベース車よりもホイールベースを伸ばす場合もありますが、多くはコスト面を考えて同じ長さだったりすることが多いようです(ゴルフもカローラも同じです)。さらに大きくて重いボディを乗せるので、FF車だとリアオーバーハングに重量物を乗せた時にトラクションに悪影響が出ます。さらにハッチバックの小さなボディに比べて車体の剛性も確保しにくくなるので、走りの質感もベース車より劣ります。

  そしてベース車の貧弱なパワーユニットをそのまま使うと過積載気味の時に走行性能に不安が残るため、トヨタはやや大きめのエンジンを使い、VWアイドリングストップをキャンセルするなどして対応しています。また足回りも重量積載物によるピッチングを防ぐために、トラックのリジッドに近い耐荷性の高いものが使われるため、ゴルフなどは乗り味が大幅に低下します。結局のところ当初の設計通りのシャシー性能が発揮できないことを完全に見越していて、それなりのコストしかかけずにリーズナブルな価格設定で売る事が多いようです。

  Cセグワゴンは一見コストパフォーマンスに優れたモデルが多いように錯覚しますが、クルマ自体はいろいろな部分が妥協されてしまっているのが難点に挙げられると思います。そんなワゴン市場に新たな旋風を起こそうという「企み」を感じるのがマツダとスバルで、どちらもほぼ同じタイミングで「セダンとの作り分け」という戦略を掲げた高性能ワゴンを投入してきました。

  マツダアテンザワゴンは、なんとセダンとホイールベースが80mmも違うという驚きの設計で登場しました。一般的な説明では、アメリカ市場向けのサイズのセダンと日本や欧州向けサイズのワゴンのサイズを分けるためと言われています。しかしワゴンボディによる剛性の低下を考慮に入れれば、セダンとのバランスを80mmの差で埋め合わせているといえます。わざわざホイールベースを変える理由は間違いなくパフォーマンスの向上にあるといえます。さらにワゴンの積載に合わせて大きなトルクが使えるディーゼルエンジンを投入した主旨も見逃せません。マツダはワゴンありきでアテンザを設計しているといってもいいかもしれません。

  このマツダの動きに合わせてスバルが発表したのが、レガシィと切り離されたワゴン専用モデルのレヴォーグです。別のブログ記事でも書いたことですが、こちらも専用のホイールベースを持つWRXと共通に開発されたシャシーを使います。そしてワゴン専用モデルということで、トルクがあるガソリンターボとトラクションに強いAWDを全グレードに装備するという、ワゴンのクオリティに拘った展開をしてきました。

  マツダディーゼルもスバルのガソリンターボも仮想ライバルのBMWメルセデスの同スペックのエンジンを性能面で上回っていますし、ミッションの仕上がり、安全装備、内外装もこれらのプレミアムブランドを完全に「下剋上」してしまうほどの出来映えです。中型車ワゴンの「常識」を大幅に塗り替えつつ、有り余る実力で、高級車の「矜持」を十分すぎるほど感じさせてくれます。これぞ日本のクルマ作りだ!と全世界に向かって誇らしげに叫びたいですね。
  

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