CARDRIVEGOGO アーカイブ・ブログ

はてなダイアリーで書き殴っていた自動車に関する放言記事を1つのブログにまとめました。

新型スカイラインに対する素朴な疑問

 「スカイライン」と聞けば、同クラスのセダンよりも「スポーティ」で、ドライバーズマシンとして常に高いレベルで評価されるクルマというイメージが一般的だと思います。2002年に直列6気筒スカイラインは一旦姿を消し、全くコンセプトを一新したV35スカイラインへとバトンタッチが行われ、V36そして今回V37へとフルモデルチェンジが行われたわけですが、日産もその「スポーティ」なイメージを戦略的に内包してきました。

  直列6気筒時代のスカイラインファンの中にはV35以降のスカイラインに対して厳しい意見を持つ人がいる一方で、日産も単純にBMW3シリーズに代表されるドイツ車風のスポーツセダンを模倣するだけでなく、「日本の自動車文化」と言える要素を投入して、独自のスタンスを確保してきました。その1つがスカイラインの代名詞となっていた「4輪操舵(4WS)」で、バブル期に花開いた日本の「スポーツカーブーム(1989~2002頃)」の中で生まれ、その後他のメーカーではことごとく姿を消し、日本車では絶滅寸前だった技術を日産はスカイラインで使い続けました。

  日産は「ドイツ型スポーツセダン」の決定的弱点は旋回性能にあることを見抜いていて、BMWを越えるボディ剛性に4WSを備えて、ごく短期間で北米プレミアムDセグの頂点を奪取しました。ここから先はやや憶測も含まれるのですが、このスカイライン(インフィニティG)の成功を横目で見ていたレクサスが、現行レクサスGSから投入した新型シャシーに4WSを投入。どうやらこの安定の「トヨタ采配」に日産も苦笑いだったようですが・・・。

  4WSが必ずしもプレミアムDセグの決定打ではなく、あくまで日産がドイツ勢に対するアドバンテージとして目を付けた技術に過ぎなかったのですが、レクサスにパクられるのを予期していたように、V37スカイラインでは4WSを放棄し、「ダイレクトアダプティブステアリング(DAS)」を新たに採用しました。つまりDセグプレミアムとしての「スカイライン」の切り札を変えたわけですが、当初は多くの人が新機構の「追加」と考えていた節がありました。しかし日産としてはコストの掛かる機構を幾つもぶら下げるなんて非効率なことはせず、他車との差別化が出来る最も効率的で話題性がある機能(=DAS)を1つ採用すればそれでいいと考えているようです。

  これには最後の最後でちょっと裏切られた気がしました・・・。もちろん私の勘違いな部分もあるのですが、スカイラインは新機能を次々と搭載してポルシェ911のような「進化型」のクオリティカーのセダン版を標榜しているのだと勝手に解釈していました。V36をあらゆる面で上回る抜群の走行性能!を追求して450万円は少し(相当に)安いなという気がしてはいましたが・・・。

  それでもこのV37スカイラインの価値が損なわれるものではありません。日産が今回仕掛けた「影のコンセプト」は「新型スカイラインはミニ・レクサスLS-HV」というものじゃないでしょうか? 新型メルセデスCクラスがSクラスレベルの性能を小型のボディで再現した!と話題になっているようですが、新型スカイラインはレクサスLS-HVの「HV&AWDによる経済性と走行安定性」「高出力」「静音設計」といったポイントをことごとくキャッチアップしています。

  レクサスLSのフロントのマルチリンクサスから発揮される「限界の高い」ハンドリングを、サス形状ではなく「ステアバイワイア」で追求するというアイディアが今回のクルマの肝なんじゃないかと思います。Cクラスはフロントをマルチリンクに変えて飛躍的に乗り味が向上したようですが、スカイラインもそれに負けないくらいの飛躍を遂げています。トヨタはGSで日産のお株を奪ったわけですが、日産はスカイラインで逆にレクサスLSの孤高の地位に迫りました。「スポーツセダン」だと思って乗りに行ったら、「ワンランク上の高級サルーン」だったという率直な感想も、設計の方針を考えたら当たり前のことで、むしろ今ではレクサスIS350の方がスポーティに成りましたね・・・。トヨタと日産はお互いに意識をしていないと発言していますが、やはりお互いの良さをパクリ合うという「らせん構造」は40年前から全く変わっていないようです。

  
最新投稿まとめブログ」へのリンク