「コルベットに憧れながらゴルフGTIに乗る・・・」なんだかドイツ人も日本人も考えていることは一緒のようです。ドイツ車と日本車が世界のクルマ産業の最先端を走っていることは、疑いようのない事実なのですが、究極的に憧れるクルマ、大抵はドイツ車でも日本車でもありません。
ドイツと日本どちらのクルマも、その民族性から「真面目過ぎる」とよく言われます。ドイツ人と日本人の全員が真面目というわけでなく、巨大メーカーでクルマの設計を担当する地位に付く人間は、例外無く「真面目」なのかもしれません。人の命を乗せて走るクルマが真面目じゃなかったら、もちろん困りますよね。あるいは歴代の「真面目過ぎる」クルマの設計の積み重ねが、今日のドイツ車と日本車の名声につながっているのかもしれません。
クルマ好きの多くが、常套句のように口にするのが、「トヨタのクルマはつまらん・・・」というフレーズです。「トヨタのクルマ」という括りにすでに違和感がありますが、そもそもどこのクルマと比べてトヨタのクルマはダメなの?と聴くと、客観的で明快な答えはそれほど多くなかったりします。
ドイツではトヨタブランドは、アウディやBMWを軽く上回るほどの顧客満足度を獲得しています。全ブランドでメルセデスに次いで2位です。まあこのアンケート自体に大した意味はないのですが、トヨタ車はドイツでは「カッコイイ」「高性能」なクルマとして好評です。中にはエスティマなど不評で追い出されたクルマもありますが、10年前の段階ですでに圧倒的な評価を得ているのは、当時のドイツのクルマ雑誌を見れば明らかです。
2003年の段階で「ヴィッツ(ヤリス)」「セリカ」「MR-S」「カムリ」「アルテッツァ」といったトヨタの主力欧州マーケット戦略車はいずれも高評価を得ています。そして現在もセリカ・MR-Sの後継となっている「GT86」が絶賛されています。日本では全く存在感がない新型オーリスも「欧州版カローラ」としてスマッシュヒットしました。
不思議なことに、これらのいずれのクルマもなぜか日本市場ではやや「退屈」な印象があります。しかしドイツ人にとってもまったく同じように、アウディA3やBMW3は非常に「退屈」なクルマに映るようです。ドイツ人にとってはジャーマン・プレミアムの一般車はとても「退屈」で、その対極にあるクルマがランエボXやGT-Rなどのポルシェ911と肩を並べるほどの魅惑の「スーパースポーツ」たちです。
結局ドイツ人も日本人も自国のクルマではなく、互いにライバルのクルマが好きです。ちなみにドイツの人気ブランドは2位トヨタ3位マツダ4位三菱です。それでもドイツ人・日本人ともに究極にエレガントなクルマとなると、マセラティやジャガー、アストンマーティンを想像してしまう人が圧倒的に多いです。日本のクルマ好きがドイツ車に対して感じるのは、パッケージングの「素晴らしさ」と同時に強烈なまでの「ダサさ」です。これを感じない人は「知らぬが仏」のおめでたい人です・・・。